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この春、定年退職した60歳の砂丸富男さん(仮名)は妻(58)と二人暮らし。長男(35)と長女(32)はすでに結婚し、孫は2人。資産は30年ローンで購入した一戸建てと預貯金、死亡保険金で合計9,000万円(上図参照)。
砂丸さんは、友人から「遺産相続で土地を手にしたものの、相続税が支払えずマンションを手放した」という話を聞き、相続税に詳しい税理士の奥典久さん(38)を訪ねた。

- 夫
- 相続税ってそんなに高いんですか?
- 税理士
- そうでもありませんよ。相続税を支払う必要がある人はその年に亡くなった人の5%ほど。と言うのも、遺産の内5,000万円と相続人1人につき1,000万円が控除されるからです。例えば、配偶者と子供2人がいる場合は8,000万円までは相続税はかからないんです。
- 妻
- 生命保険の死亡保険金(4,000万円)を加えて9,000万円だから、1,000万円が課税対象なんですね。
- 税理士
- いいえ。死亡保険金は【500万円X法定相続人の数】が別に控除されるので、4,000万円の死亡保険金を相続されるなら1,500万円が控除され、りの2,500万円が死亡保険金として課税対象となり、砂丸さんの場合は総額7,500万円なので相続税はかかりません(下図参照)。
- 妻
- そうなんですか?
- 税理士
- ただし、夫が保険料を負担する契約の場合です。保険料を誰が負担し、誰が受け取るかによって、「所得税」や「贈与税」になることもあります。



- 妻
- ところで、生前贈与は毎年110万円までは無税でしたよね。一度にもっと多く譲り受けて無税になる方法はないんですか?
- 税理士
- ありますよ。65歳以上の親が20歳以上の子に対して贈与する場合、「相続時精算課税」という制度を利用すれば、2,500万円(住宅購入なら3,500万円)までは特別控除され無税です。
- 妻
- それ、いいですね。
- 税理士
- 相続税がかからない人や、値上がりする財産(株などの有価証券や土地など)を早く移転させたい入らには有効ですが、注意点もあります。先はどの金額はいわば特別控除の限度額ですから、それ以上贈与を受けた場合は20%の贈与税がかかります。年間110万円の非課税の規定は使えません。また、すでに分け与えたお金も相続が開始した時には相続財産に組み込まれるので、相続財産が膨れ上がり、ほかの相続人に迷惑をかけることもあります。

- 夫
- 友人の父親は家族に内証で連帯保証人になっていたらしく、膨大な借金があったので、相続を放棄したんですよ。
- 税理士
- 借金がある場合はプラスの財産もあわせてとなりますが、放棄できます。それには相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きが必要なんです。
- 妻
- 手続きをしなかったら?
- 税理士
- 手続きがなければ、父親に借金があれば負の遺産として相続しなければなりません。
- 妻
- 相続放棄すると、死亡保険全もあきらめないといけない?
- 税理士
- いいえ。生命保険などは相続放棄の対象外なので大丈夫です。
万一もめたら…
家庭裁判所では、遺産相続など家庭のもめごとに対する「家事事件の手続き」の説明を無料で行っている。相談者から事情を聞き、どの申し立てが利用可能か、必要な書類、管轄裁判所などを紹介してくれる。
遺産分割については当事者間で話し合いかつかない場合は、まず「家事調停」で調停委員が双方の合意をあっせん。まとまれば強制執行の申し立て可能な「調停調書」を作成。だめなら「家事裁判」となり、家事審判官(裁判官)が裁判で決める。
最近、増えているのは「相続放棄」に関する相談。大阪家庭裁判所管内でも1995年は4379件だったのが、2005年は1万2979件と約3倍に。放棄する場合は、亡くなった人の最後の住所地での申し立てが必要。
大阪家庭裁判所の「家事相談」の受け付け時間は、平日9時30分〜11時30分、13時〜15時30分。予約不要。相談時間は1人30分程度。秘密厳守。電話は、06(6943)5321。

- 税理士
- 実は最もやっかいな問題が、財産を分ける「遺産分割」です。
- 夫
- なんですか、それ?
- 税理士
- 亡くなった人の財産や債務を誰が引き継ぐかを話し合いで決め、各相続人が自筆で署名、実印を押した「遺産分割協議書」を作ります。ところが、欲の張り合いが高じて裁判になるケースもあります。
- 夫
- でも、僕の身内に限っては・・。
- 税理士
- その認識の甘さが骨肉の争いの元なんですよ。例えば、相続人が母親と兄弟妹の4人で長男と二男の嫁や妹の夫も加わり、「妹はマンションを買う時に融通してもらった」「同居して親の面倒をみたんだから、ほかよりは多めにもらわなきや」などと主張し、話がこじれるんです。
- 妻
- 何よ、その目は!
- 夫
- いや、別に・・。でも、おれの場合は、親は自宅と土地が唯一の財産だから、弟と2人でとりあえず「共有名義」にすればいいか。
- 税理士
- その「とりあえず」が不幸の元凶。いずれ売却したり、建て替えるにしても共有者すべての合意が必要になるんです。最初は兄弟2人でも、子どもの代になると相続人が枝葉に分かれて増えていきます。
- 妻
- 大変そうですね。
- 税理士
- 先日も、父親が亡くなって土地を相続だ息子が名義変更しようとしたら、土地の名義は先々代のおじいさんのまま。過去にさかのぼって亡くなった人の除籍謄本や必要な書類をそろえねばならず、相当、時間と労力がかかりましたよ。
- 夫
- 早々に売却するほうが無難だろうけど、その前に買い手が付くかどうかだ。
- 税理士
- 相続人の1人が不動産を相続し、ほかの相続人に相当分の金銭を支払う「代償分割」という方法もあります。
- 妻
- あの土地は弟さんにあげて、私たちは現金でもらえば・・。
- 夫
- そんな都合よくいくか?


- 妻
- 長男の嫁として私が義父母を介護すればいくらかもらえるの?
- 税理士
- どんなに尽くしてもお嫁さんは1円だってもらえません。相続の権利があるのは配偶者と血族(子どもや父母など)のみだから。
しかし、遺言があると話は別。不毛な争いも避けられます。
- 夫
- どうやって書くんですか? パソコンでもいいんですか?
- 税理士
- パソコンはダメです。録音や録画も無効。自分で書く「自筆証書遺言」なら、紙に手書きで誰にどの遺産を残すかという内容と、日付(○年○月○日と明記、吉日などの表記は不可)、氏名を書いて押印(認め印でも可)が最低条件。訂正はできますが、訂正印を押し、余白に何文字削除して何文字追加したかを明記せねばならず、書き直す方がいいでしょう。
また、苦労して書いても遺言を見つけてもらえなかったり、見つかっても、家庭裁判所での「検認」の手続きをせずに封を切れば科料の処分を受けます。お金はかかりますが「公正証言遺言」(別項参照)をお勧めします。
- 妻
- 遺言って必要かしら?
- 税理士
- 遺産を巡る子や親族問の醜い争いを防ぐことは死に逝く者の最期の責任。定年をきっかけに遺言を書く人も多く、団塊世代は“遺言適齢期”とも言えますね。
