【4】遺産分割及び名義変更 ~すべての相続に必要なことです~
遺言書がある場合には、分割協議を必要としませんが、留意すべき手続きがあります。
遺産分割協議は円満に成立する事が何より重要ですが、その内容が基で後々問題が生じる事もあるため、将来の計画も考慮に入れた遺産分割に心掛けて下さい。
名義変更は「いつまでに」という期限は有りませんが、遺産分割が確定した後は出来るだけ早い時期に手続きを完了しておけば不便なことが生じなくて済みます。
(1)遺言書
1.自筆証書遺言
- 遺言書の保管者や発見者は家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。
- 封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人又は代理人の立会いがなければ開封することは出来ません。
遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処せられます。
2.遺留分
遺留分権利者と遺留分総額は「相続発生前の方へ」を参照して下さい。
各人ごとの遺留分はその遺留分に対する各相続人の法定相続分を乗じた割合です。
例) 配偶者と子2人の場合
- 遺留分総額 = 遺産総額 x 1/2
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各人ごとの遺留分
- 配偶者: 遺留分総額 x 1/2
- 子: 遺留分総額 x 1/4
(2)遺産分割協議書
1.様式
必ずしも書面による必要は有りませんが、不動産登記や将来の紛争を避けるためにも書面による協議書を作成しておくべきです。(特別の様式等は定められていません。)
協議書には相続人全員が署名・押印しなければなりません。(持ち回りなどでも全員が署名・押印していれば有効です。)
未成年者: 特別代理人(又は未成年後見人)が署名・捺印します。
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裁判所に提出する書式例集
代理人選任の申立書、又は、未成年後見人の申立書、外国に住所がある日本人:領事館等で拇印証明等を発行する必要があります。
2.分割協議のやり直し
特別な場合を除いては分割協議のやり直しは出来ません。
当初の協議と異なる財産を取得した場合にはお互いで贈与を行ったものとして贈与税の課税対象となることがあります。
3.財産の分割協議と債務の分割協議
遺産分割協議は「財産」と「債務」の双方の分割協議を行うものですが、相続人のうちの一人が全財産を取得したからといって、債務について全額を返済する必要はありません。
債務の分割については「通説」や「判例」を基に十分に留意する必要があります。
従って、財産を取得していない相続人であっても「相続の放棄」を行わない限り、債務を承継したこととなります。
4.平等な遺産分割
遺産分割で、「兄弟姉妹仲良く」という事で遺産を相続分通りに分けている場合があります。確かに相続人全員が法律通りに分けるのが一番揉めない事となるでしょうが、相続分などでの共有は後々困る事となる財産もあるので注意して下さい。
分割できる財産が無い場合には、代償分割(土地などを1人の相続人が取得し、その代わり現金等を他の相続人に渡す方法)などで極力共有は避けるべきです。
(3)放棄
1.相続の放棄
- 期限: 自己のために相続の開始があったことを知った時(通常死亡の日)から3月以内
- 取消し: 一旦受理された場合には3ヶ月以内でも取消しはできない。ただし、詐欺・脅迫などで放棄をしている場合には取り消せます。
- 財産の管理義務: 放棄により他の人が相続人となる場合に、その人が財産の管理を始めるまでは管理をしなければなりません。
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裁判所に提出する書式例集
相続放棄の申述書
2.遺言の放棄
- 期限: いつでもできます。
- 取消し: 相続の放棄と同様です。
3.参考
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「相続の放棄」と「遺言の放棄」は連動するものではありません。
相続人が被相続人からの遺言があるが、他の相続人と協議により分割を行いたい場合には遺言の放棄を行えばその財産は分割協議の対象財産です。
相続権は放棄するが、遺言による財産のみ取得したい場合には、相続の放棄を行えば、分割協議の対象となる財産からその遺贈財産を除いて、他の相続人が分割協議を行う事となります。
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債務が多いので相続の放棄をしたいが、生命保険の受取人となっている場合
債務が多い場合には、家庭裁判所にて3ヶ月以内に相続の放棄を行う事により、相続財産は取得できませんが、その債務を承継する必要もありません。
生命保険金は、保険契約の上の保険金受取人の権利として請求し、取得できるため相続権を放棄しても生命保険金は取得する事が出来ます。(相続税は課税の対象です)
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「実際の放棄」と「事実上の放棄」の違い
分割協議で「自分は財産を取得するつもりはないので放棄する」と言って取得財産なしで分割協議に署名押印している場合には「事実上の放棄」をしているかもしれませんが、「実際の放棄」をしているわけではありません。したがって将来多額の債務が発見され、債権者から債務返済の請求をされた場合には返済する義務が生じます。
家庭裁判所に申述し、正式に受理されていないものは正式な放棄ではありません。
(4)名義変更
1.預貯金
金融機関によりその取り扱いが多少異なりますが、一般的には預金を相続した相続人が直接金融機関で下記の様な書類を提出し手続きする必要があります。
- 相続に係る依頼書(金融機関で書式等が異なります)
- 遺産分割協議書・遺言書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明
- 預貯金の通帳や証券
2.有価証券
株券等が保護預かりにしている場合には証券会社に名義書換の手続きを依頼して下さい。
手許にある場合にはその企業の担当部署又は名義書換代理人の信託銀行等に株券等を提出し所定の手続きを行うことになります。
- 株式名義書換請求書等(書式等が異なります)
- 遺産分割協議書・遺言書等の同意書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明
- 手許にある株券等
3.自動車
名義変更は被相続人の死亡後15日以内に所轄の陸運事務所又は自動車検査登録事務所にて行います。名義変更を行わずに、事故等を起こした場合には相続人全員の責任となります。
自動車販売店に依頼すれば有料ですが代行してもらえます。
- 移転登録申請書
- 相続人全員の同意書
- 相続人の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明
- 自動車車検証
- 自賠責保険証明書
- 自動車保管場所証明書(相続人のもの)
4.不動産
不動産の名義変更には登録免許税や不動産取得税(取得原因が相続の場合は非課税、遺贈の場合は課税)が係るため名義変更を行わないままにしているケースを見かけますが、後の売買や相続等のためにも必ず行う事をお勧めします。
司法書士に依頼すれば有料ですが代行してもらえます。
- 遺産分割協議書・遺言書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡の時までの全ての謄本(複数になる場合があります)
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明
- 固定資産税の評価証明
- 登記申請書・登記申請書副本
5.その他財産
上記以外に名義変更が必要となるものは下記のものです。
- 電話加入権
- 電気、ガス、水道、NHKの受信料
- 貸付金や借入金
- ゴルフ会員権
- 営業許可や事業免許
- 著作権や特許権等の権利
6.注意点
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登記の時期
相続税の申告が必要な場合に、相続税の試算等を行わずに不動産登記等を全て完了している場合がありますが、相続税は取得した財産の状態により相続税額が大きく変わる場合があります。
一旦名義変更を行ってしまうと贈与とみなされる事もあるので先ず専門家に相談した後に手続きをする事をお勧めします。
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一部分割協議書の作成
遺産分割協議書は上記の通り各手続きに必要となり、複数の人に相続財産等の状況が知られる事となります。そのため、不動産登記や預金名義変更のためなど目的財産別に遺産分割協議書を作成(一部分割協議書)する方法もあります。
相続税は遺産が分割されている事を条件とする優遇規定や遺産が分割されていない事により評価が高くなる事があります。その為、相続税の申告が必要ではあるが、申告期限(相続の開始から10ヶ月以内)までに全ての財産について分割協議が成立しない場合には、協議が成立している財産だけでも遺産分割協議書を作成する事をお勧めします。
しかし、分割協議が成立していない財産について後の分割協議の際に、既に分割協議により決定している財産についての再分割協議はできない事に注意して下さい。



